BUSINESS FRONTLINE 01
かつてない素材を
日本市場にいち早く投入。
スピードと感性が
ビジネスの勝敗を分ける

栗林 孝典 Takanori Kuribayashi

2007年入社

ABOUT PROJECT

アジアでの海外研修に参加していた栗林に急遽、ヨーロッパへの出張が命じられた。
新たなダウンの生産企画が社内で持ち上がっている中、欧州の商材や生産のオペレーションを視察することが目的だった。
世界有数の高級羽毛素材の産地である東欧の視察を終え、
イタリアの関連会社TATRASにて商談を進めていた時、そこで栗林は運命的な素材と出会う。

スピードと誠意ある対応。日本にはない新素材の独占契約

栗林がイタリアのTATRASのショールームで生地の提案を受けていた時だった。隣の商談スペースでは、TATRASの担当者が珍しい商材の提案を受けているのが視界に飛び込んできた。どうしても気になった栗林は、商談を終えるとすぐさまその素材メーカーのもとに駆け寄り、サンプルを見せてもらった。その素材が「THINDOWN」だった。「今まで数多くの商材に触れてきましたが、初めて手に取ったときは、これがダウンなのか?と今までにない衝撃を受けました。THINDOWNは世界で初めて開発されたシート状のダウンで、従来のダウンでは実現不可能だったデザインやアイテムへの展開が可能だと直感的に感じました」。
同時に、「これは本当に日本にない素材なのか?」という疑問を抱き、サンプル写真を日本にいるチームメンバーに送付した。メンバーからの反応も良く、栗林は早速、商談を進めた。来月に行われる展示会に資料だけでも良いから送ってほしいと懇願した。サンプルの送付が間に合うタイミングではなかったが、それでも栗林に迷いは無かった。「これは絶対に行けるはずだ」。展示会では、サンプルがない中、資料だけでの説明に終始したが、栗林の読みは当たった。早速、大手アパレルメーカーから大口の商談が舞い込んだのだ。「とにかくスピードが命でした。いち早くこの画期的な素材を日本で販売したい。その思いで突き進んでいました」。
展示会の翌月には、イタリアの素材メーカーの社長が来日した。トップ同士の対談はほんの1時間ほどの話し合いで終わり、無事に契約が締結。「THINDOWN」の日本での独占契約を勝ち取ったのだ。栗林は言う。「日本の企業は意思決定が遅く、会議や検討を繰り返すうちに、みすみすビジネスチャンスを逃すということもよくあると聞きます。私は、スピードを重視するとともに、仕入先となる素材メーカーとの信頼関係を築くことができるよう精一杯の誠意をもって対応しました。こちらの熱意が伝わったと感じた時は、すごく感慨深かったですね」。栗林のTHINDOWN構想がさらなる進展を迎えた瞬間だった。

素材そのもののブランディング。見え始めたビジネスモデル

素材メーカーとの正式な契約を結ぶまでメンバーは奔走した。イタリアからの輸入経路の確保、物流コストの試算、日本での品質管理など、やるべきことは山積みだった。大手アパレルメーカーとの大口契約はあったが、契約期間は1年間しかない。「大手アパレルメーカーとの契約期限が切れた後の展開が勝負だと思っていました」。栗林は、先々のビジネス展開を見据えていた。「THINDOWNは決して安価なものではありません。だからこそ、素材そのものの価値で勝負してみたかったんです。この素材の素晴らしさをちゃんと伝えることさえできれば、THINDOWN自体がブランドとして認められるようになる、素材そのものをブランディングしてみようと考えていました。」。
THINDOWNの発表イベントは、栗林にとって新たな挑戦となった。従来にはない見せ方によって素材自体が持つ魅力を訴えかけ、一方で、価格は一切公表しなかった。伝えたかったのは、「この素材で何ができるのか?」。その答えを多くのアパレルメーカーの方たちと一緒になって作り出していきたいと考えていたのだ。評判は上々だった。来場者数は予想をはるかに上回り、栗林の確信はますます深まっていった。
現在は商談も進み、THINDOWNを使った商品の売れ行きも好調、新たなブランドからの問い合わせも増えているという。栗林は嬉しそうに話すが「実は」と声を潜めた。「最初、イタリアでこの素材を見つけた時に直感的に『いける』と感じた反面、ビジネスとして成り立たせる自信は10%ぐらいだったんです」。しかし、実際に顧客の反応を見ていくなかで、徐々に『売れる』という確信に変わっていったのだという。「これまでのように顧客のニーズに合わせてモノを作るだけではなく、自分の感性を磨いて、こちらから新たな付加価値を発信していくことが、これからは求められると考えています」。将来的に、ブランディングのパイオニアとして自身の道を切り開いていきたいと語る栗林。商社人自らが感性を持って新たな価値の提供を始める時だと力説する彼の思いは、これからもきっと多くの人々の心に響き続けるに違いない。